2022年の制作ヒストリー

作品1 「食いしん坊の妖精の夜」 透明水彩+アクリル+パステル

このモチーフはローソク立てと、イチゴのところにはカボチャでした。ローソク立てがきれいだなぁと、出来るだけ精緻に描こうと頑張っているうち、カボチャじゃ色合い的にイマイチだなと思い始め、するとどこかで妖精のキキが「イチゴだよイ・チ・ゴ! 」と囁くので、こんな絵に・・・手前の綺麗なビーズの首飾りは娘が作ったもので、前から気に入っていていつか絵に入れようと思ってました。全体に好きなブルーの勝つ色合いなので首飾りはピンク。黄色のシューズは誰のもの? 多分お姉さんのヴィヴィアンのかな・・・

「食いしん坊の妖精の夜」

キキはイチゴを食べに、ダーリング家の人たちが寝てしまった後、

ダイニングのテーブルにやってきました。

「ふっふふふ、イチゴ食べよっと! 」

そばには大きなホイップクリームの入れ物がありましたが、そんなものは要りません。

前に一度、ホイップクリームがたっぷりかかったイチゴがあったので食べてみたけど、イマイチでした。

やっぱりイチゴはそのままが一番

かじると「うーん、たまらんわ! 」少しすっぱくて、甘くて・・・

常若の国に住む姉のヴィヴィアンと違い、ヒト好きのキキは家付き妖精になり、ダーリング家に居ついています。

昼間はたいてい眠っているのでキキは知らないのですが、以前、イチゴの食べさしが放ってあったのを見つけたウェンディが、「きっと妖精よ! 」と、自分の好きなホイップクリームをたっぷりかけたイチゴを置いてみました。

でも、ホイップクリームのかかったイチゴは一口かじられていただけで、何もかかっていないイチゴがたっぷり食べられていました。

まあ、たっぷりといっても、キキはちっぽけなので、1つと半分ほどだったのですけれど。

そういうわけで、ダーリング家では、季節が来ると、イチゴをテーブルに盛って置きます。 

妖精に親切を施すと幸運が舞い降りるというのですが、ウェンディの願いはそんなことより、早くイチゴ好きの食いしん坊さんに会えることなんですがね・・・

作品2 「ぼくも飛びたい! 」ー東日本大震災追悼2ー アクリル+ソフトパステル

これは苦労した作品。何よりも怖い絵は苦手な自分がどうやって追悼の気持ちを表現できるのか悩みました。やっとイメージが降りてきたのはよかったけど、今度は細かい作業が大変でした。カゴを描くのにマスキングテープやインクを駆使しましたが膨大な時間かかりました。真ん中のクリーム色の帯状のものはお気に入りの画家日下部直樹さんttps://www.kusakabenaoki.com/の影響。先生にはなくてもよかったねと言われましたが、この隔たりに、帰ることのないカナちゃんへの想いを、遠く異国にある廃城のイメージと共に表したつもりです。

はじめてのアクリル中心の作品。ジェルメディウムやマットメディウムを使い、質感にもこだわっています。まずカゴの部分をすべてマスキングインクとテープで覆い、さらにティタニアとヴィヴィアンも覆い、飛んでいく鳥やオレンジも覆ってから背景を多重に塗り、その上で質感や風合いを出すためソフトパステルを使いました。

それからすべてのテープ、インクを取ってカゴをキャメロンプロ0/5号で定規も使いながら慎重に描きました。次に妖精のふたりを描き、最後に娘が小さいときに描いたパック(イタズラ妖精)たちを描きました。

この絵では、読売新聞の記事で知った、東日本大震災でお亡くなりになったカナさんこと瀬尾佳苗さんとご家族への追悼の想いを優しく描こうと思いました。それをご両親に伝えたかったのですが、術がなく、とりあえずe-集団展に出しました。ブログが出来ればなんとかお伝えしたいと思っています。伝えてどうなるでもない気もするけど、同じように悲しい思いや、そこから前向きに進んでほしいという強い願いを持っている人間がいることを知ってもらえるかなぁ・・・

「 ぼくも飛びたい 」  (アクリル、ソフトパステル)

              (東日本大震災追悼2)

カゴの鳥は小さなオレンジを入れる入れ物に使われていました。

幸せだった時は飛ぶことも出来たけれど、今は心も体も針金の枠だけになって、窓際に置かれていました。

 

たまには妖精たちが、カゴの鳥から、オレンジをいただいて、かじったり、 転がして遊ぶのでした。

カゴの鳥は、窓から渡り鳥が飛んでいくのを見ることができました。それは心を悲しくさせました。

「あいつらはいいなあ、ぼくみたいにオレンジの入れ物じゃない。ちゃんとした翼があって、血肉もあるんだもんなあ」

「何ぶつぶつ言ってるの? 」

「ああ、ティタニア様か・・・ ぼくはこうやってオレンジ入れてずっといるだけだろ? 」

「そうだね」

「ぼくだって、昔みたいに空を飛びたいよ」

「飛んでどうするの? 」

「大切にしてくれた嬢ちゃんのいる岩手へ行くさ」

「嬢ちゃん? カナちゃんのことかい? もういないんだろ? 」

「ああ、津波があったんだ。それでいなくなった」

「寂しいのかい? 」

「大船渡ってところに家があった。もう一度そこに行ってみたい」

「行ってどうするの? 」

「岬に石碑があるらしいんだ。そこ行ったら嬢ちゃんとのこと思い出すかもしれない。幸せだったときのこと。楽しかったこと」

「そか・・・いいよ、乗っけてくれるんなら」

「え? 飛ばしてくれるの? でもティタニア様、自分で飛べるだろ? 」

「疲れるんだよ。鳥に乗っかって飛ぶほうが楽で楽しいからね」

「パックたちは? ほっといていいの? 」

「ああ、ヴィヴィアンが相手してるわ」

ティタニアはふありんとカゴに乗ると、ことこと笑いました。

するとカゴの鳥は体が暖かくなってくるのでした。

それは頭のてっぺんからだんだん下に降りてきます。まるで血肉が戻って沸き立つようです。

「ほら、もうすぐ飛べるから、そしたらカナちゃんのいた方へ、私乗っけて飛ぶんだよ。振り落とさないように上手に飛んでよ」

「ああ、ぼくはもう一度飛べるのか! 」

鳥の背中で少し得意気な妖精の女王が、かたりと首をかしげました。

作品3 「音の彼方へ」2022年度高槻市美術展入選作 アクリル+パステル

この作品以降はまだe集団展に出していないので詩はありません。23年9月の第9回には出す予定です。この絵は市展レベルでは入選の自信がありました。比較的細部まで書き込むことができてきて、アクリル絵の具の扱い方にも慣れてきた時期です。体験的にわかったのは(当たり前なんですが)下地の作りをいい加減にしないこととか、重ねることでいい色合いが生まれることとか・・・かな

子どもたちは誰も音楽が好きです。華やかで不思議な音楽世界を目指して駆けていくのです。そういうイメージを描こうと思いました。

時間がかかったのはピアノやメトロノームあたりを1つひとつ極細のマスキングテープで覆って塗ってまた別のところに貼って塗って取っての繰り返し。ピアノの黒鍵と白鍵はやっかいですね。まったく別の描き方で空気感だけをつかむ方法もあるとは思うのですが初心者なもので・・・わからん!

作品4 「タイタニアの想いでの食卓」2022年3月 2022年度茨木市美術展入選作

これはとにかくウイリアム・モリスのアカンサス 的な敷物のデザインを描こうとしたのですが、こちら、やや高いところから見ているので当然遠近法で描かなければなりません。それで、敷物だけを写真に撮り、四苦八苦してトレースして、ようやくできました。トウモロコシの質感などは実物を見ていただかないとわからないのですが、メディウムを使い、結構うまく描けました。タイタニアはまだ。妖精の女王のお叱りを受けないようこれからもっと精進致します。

 

作品5 「ヒトデくんの冒険の旅1」ー映画グリーンブックのオマージュー アクリルのみ

大好きな2018年制作のアメリカ映画「Green Book」にインスパイアされた背景。描いたのは映画のアイコンともいうべきキャデラックデヴィルセダン。その美しすぎるターコイズグリーンは僕の心を虜にしました。その前輪部分を描いてます。これに乗ってふたりの主人公が米南部を回るロードムービー。音楽好きにもたまらない映画でした。というわけでヒトデ君の最初の旅はアメリカ南部まわり。

作品6 「ヒトデくんの冒険の旅2」ーヒルダ・ルイスの物語『飛ぶ船』のオマージュ アクリル+ソフトパステル+パンパステル

「飛ぶ船」は1936年、英国の児童文学作家Hilda Winifred Lewis(1895-1974) が著した名作。先輩の先生に教えてもらって読んだ作品で、原題The ship that flewは若き研究者のぼくの胸を打ちました。「そうだよなぁ、Flying shipじゃないんだ」と、読後改めて原題から伝わってくる切ない思いを感じました。自分でそのイメージの絵を描けるなんて、もう嬉しくて嬉しくて、「絵やってよかったなー」って、もう一度100年前の物語を読み返しながらしみじみ思ったものです。絵を描き始めて1年ちょっと、少し描きたいものが見えてきた頃です。ぼくの絵は・・・その絵の後ろに色とりどりのもう一つの絵、つまり観た人それぞれの物語の世界を生みたいのかも・・・と

作品7 「ヒトデくんの冒険の旅3」 ークリス・ヴァン・オールズバーグの物語『ポーラーエクスプレス』のオマージュ アクリル+ソフトパステル+パンパステル

Chris van Allsburg (1949-)はぼくの一番好きな絵本作家です。『ジュマンジ』の作者といえば「ああ・・・」と思われる方もいるのではないかな。クリスチャンだった我が家はずっとクリスマスを盛大に祝ってきました。クリスマスの最大のテーマの1つ、サンタは実在するのか!?に対する答えの1つでもあるかもしれません。この絵は物語の表紙を模写的に構図を頂き、自分なりに味付けして描き替えたもの。技法的にはスパッタリング、スカンバリング、グレーズなどを使い、結構幻想的な雰囲気を出すことができたかなぁと思います。スパッタリングのやり方やコツは技法の方を参考にどうぞ。

作品8 「クリスマスイヴの夜」 未公開 加筆可能性あり F3 2022年12月頃

 

サルビア出展中のため画像はありません🙇

初めてボードに直接アクリル絵の具で描いた作品。ネットの描き方に刺激を受けました。

それは、ボードに直接何種類かの色の絵の具を、パレットに出すように絞り出し、筆で伸ばしていく技法です。しかし、危険な匂いもしたので、必要な部分には先にマスキングを施しました。じゃないと、よほどインパスト(油彩などの厚塗り)でもやらないとどれだけ上から重ねても、下の色が影響するのではないかと思います。

「ロッピィ、サンタ見に行くよ」

「あ、ティタニア様、どこへ? 」

「いつもと一緒、一本杉んとこ」

「了解でーす」

ティタニアとイングリッシュロップイヤーウサギのロッピィは原っぱに1本だけ立っている杉の木のところにやってきました。

「そのうち飛んでくるでしょ・・・」

「去年もたくさん飛んでましたね」

「忙しそうだったよね。今日はお月さま綺麗・・・」

「ティタニア様、寒くないの? 」

「大丈夫。寒かったらお前を抱くから」

「はぁ・・・でも耳マフにするのはやめて欲しいです」

「シチューにされるよりいいでしょ? 」

「ひー、ご勘弁を! 」

ふたりは長い間空を眺めていました。

作品9 「ボクとミッフィと夏の雪」

これは提供モティーフはゴーヤとアボガドでした。 見ているうちに頭に雪が降ってきて、こんな絵になりました。ダブルイメージとテーブルの透明感を描くのにちょっと苦労したかな。物語は以下のような感じです。

「ぼくちゃん、ユキが降ってるよ」

「だれ? いいとこなのに、あ、その声は・・・ミッフィ? 」

「そだよ、寝てるみたいだったけど、ユキが降ってるから見たいかなって・・・」

「え! ユキ?! どこどこ? あれ? でも今夏だよ! 」

「だね。でも外、見てごらん」

 ぼくは大慌てで起き上がって窓を見た

「あ! ほんとだ! ユキだユキ! ミッフィ、ユキだよ!! 」

「そういったよ」

「そだね、そだよ。うわっ! きれいだなあ 最近冬でも降らないのに! 」

ミッフィはもう返事しない。いつもそうなんだ

ぼくは長いこと外を見ていた。雪は降り続いている

「ミッフィありがと、ぼく見たかったんだ、ユキ」

やっぱりミッフィは返事しない。いつもそうなんだ

でもまあ、それでもミッフィはぼくの友だちだ

ぼくはずっと外を見続けた。雪は降り続いている

 

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